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車大手、期間従業員の無期雇用を回避 法改正、骨抜きに

図4-1 労働契約法の「5年ルール」
トヨタ自動車やホンダなど大手自動車メーカーが、期間従業員が期限を区切らない契約に切り替わるのを避けるよう、雇用ルールを変更したことが分かった。改正労働契約法で定められた無期への転換が本格化する来年(2018)4月を前に、すべての自動車大手が期間従業員の無期転換を免れることになる。雇用改善を促す法改正が「骨抜き」になりかねない状況だ。
2013年に施行された改正労働契約法で、期間従業員ら非正社員が同じ会社で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期に転換できる「5年ルール」(図4-1)が導入された。申し込みがあれば会社は拒めない。2008年のリーマン·ショック後、大量の雇い止めが社会問題化したことから、長く働く労働者を無期雇用にするよう会社に促し、契約期間が終われば雇い止めされる可能性がある不安定な非正社員を減らす目的だった。施行から5年後の2018年4月から無期に切り替わる非正社員が出てくる。
改正法には、企業側の要望を受け「抜け道」も用意された。契約終了後から再雇用までの「空白期間」が6カ月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、通算されない。これを自動車各社が利用している(表4-1)。
トヨタは2015年、期間従業員の空白期間を、それまでの1カ月から6カ月に変えた。ホンダ、日産自動車、ダイハツ工業も2013年に空白期間を3カ月から6カ月に変更した。
自動車業界の期間従業員は、半年程度の契約を繰り返して働き続けることが多い。日産の期間従業員は連続で4年11カ月まで、トヨタ、ダイハツ、ホンダは連続2年11カ月か3年まで働ける。例えば、期間従業員が2年11カ月働いて、いったん退社、6カ月未満で再契約し、2年1カ月を超えて働けば、無期雇用に切り替わる権利を得られる。だが、空白期間を6カ月にすれば、どれだけ通算で長くなっても無期転換を求められない。
空白期間を6カ月に変更した理由について、日産、ダイハツ、ホンダの広報は、労働契約法の改正を挙げた。トヨタ広報も「法の順守はもちろん、時々の状況に応じた制度づくりを行っている」と答えた。(https://www.daowen.com)
三菱自動車、マツダ、スバルの空白期間は以前から6カ月だった。スズキは再雇用をしていなかったが、2013年に認める代わりに6カ月の空白期間を導入した。トヨタなど4社の空白期間変更により、自動車大手8社すべてで、期間従業員は無期転換の権利を得られないことになる。
法改正の議論では、経団連が「企業が再雇用をしなくなって労働者の雇用機会が失われる」などと主張、空白期間をとりいれることになった。労働組合は5年ルールの形骸化を防ぐため、空白期間を設けることに反対していた。労組関係者は「法案をまとめるために妥協の産物としてつくられた抜け道が、利用されてしまった」という。
無期雇用に転換したとしても、ボーナスや定期昇給がある通常の正社員になれるわけではない。ただ、無期雇用で職を失う心配がなくなれば、住宅ローンを借りやすくなったり、有給休暇を取りやすくなったりする。サービス残業などの違法行為にも、泣き寝入りしなくてすむ。
厚生労働省によると、期間を定めた契約で働く人は1,500万人にのぼり、うち3割が同じ企業で5年超続けて働く。400万人以上が無期雇用を申し込む権利を手にする計算だ。非製造業を中心に無期雇用の制度づくりを進める企業もある一方、無期雇用の権利が発生する前に雇い止めする企業も出ている。
自動車各社は無期転換とは別に、正社員登用を進めていることを強調する。ただ、登用者数が期間従業員全体に占める割合は、1割程度にとどまる社が多い。
労働問題に詳しい嶋崎量弁護士の話。「改正労働契約法の趣旨に反する雇用が、日本を代表する自動車産業で広く行われていることは驚きだ。他業界への波及が懸念される。不安定な雇用で働かせ続けたい経営側も問題だが、万一これを容認したのであれば、労働組合も社会的責任が問われかねない重大な問題だ。非正規社員の間には、「正社員の雇用安定しか考えていない」という労使双方への批判がもともと強い。労使で早急に議論をして改めてほしい。」
表4-1 自動車大手8社が設けた空白期間

※スズキは2013年の制度変更まで再雇用をしていなかった