3.まとめ

3.まとめ

コーパスを調べると、「彼女は、土曜日には絶対に自分の姿を見ないという約束でレーモンダン伯爵と結婚し、彼のためにリュジニャンの城を建てたが、秘密を知られて遁走したという」、「また雍州の刺吏・韋孝寛が道の一里ごとに土堠を築いて槐を植えたことに始まり、我が国の一里塚もそれに倣った」、「承久三年(1221)五月十四日、後鳥羽上皇が討幕の兵を集めた」のような例が多数出てくる。このような用例は、主語の「彼女」が自分の手で「城を建てる」という行為や、「韋孝寛」が自分の手で「槐を植える」という行為や、また、「後鳥羽上皇」が自分自身で「兵を集める」という行為をしておらず、誰かの実際の行為者を介してその行為を実現したというところで共通している。先行研究は、この共通点を持つ文を「介在性の表現」と呼び、その意味的特徴を分析している。本章は、そのような先行研究を踏まえた上、事象構造という観点から該当する現象を改めて分析した。具体的には、「介在性の表現」は複雑事象を表す他動詞文である。事象構造においては、被使役者(実際の行為者)は対象と、単純事象をなしている。その上に、さらに統語的な主体が加わっており、複雑事象をなしていると本書が主張した。また、主体と単純事象との関係は[have]の関係であると主張した。

注释

〔1〕美容室名

〔2〕△は「+」と「-」の中間段階を表す。