2.今後の課題

2.今後の課題

本書は、[-cause]の関係にある自他動詞のペアを、他動詞を中心として分析した際、他動詞を項構造(argument structure)、つまり、事象の参与者はいくつがあるのかに注目して、「介在性の表現」と「状態変化主体の他動詞文」を統一的に説明した。そして、[-cause]の関係にある自他動詞のペアを、自動詞を中心として分析した際、アスペクト構造(aspect structure)に注目して、「-単一事象」自動詞について、行為の結果を表すと特徴づけた。項構造に偏った他動詞とアスペクト構造に偏った自動詞をさらに統一的に説明することを今後の課題にしたい。

また、複雑事象を表す他動詞を分析する際、「夜を明かす」や「時間を過ごす」のようなヲ格を取る他動詞は、経路ヲ格を取る他動詞と共通点があると思われるが、本書はそれについて深入りしなかった。それを今後の課題にしたい。

さらに、他動詞は、結果と様態を同時に指定することができるのかということは、佐藤(1994b,1997)、Rappaport Hovav& Levin(2010)、Goldberg(2010)がそれぞれの分析と主張を提示している。佐藤(1994b、1997)とGoldberg(2010)は、他動詞が結果と様態の両方を同時に指定することができると主張し、Rappaport Hovav& Levin(2010)は反対の意見をもつ。本書は結果と様態の関係まで調査・分析しなかった。しかし、結果と様態の指定は、本書で論じた自他の問題と大きく関連しているため、今後の課題にしたい。

実例の動向からみれば、「-単一事象」自動詞はよくテイル形を伴って文に現れる。「-単一事象」自動詞のテイル形文は、存在文に類似していることを明らかにしたが、存在文との異同やその原理的説明を今後の改題にしたい。