日本語要旨
世界の陶磁器の発展史の上で中国の陶磁器の地位と役割について、疑う必要がない。同様に、中国の陶磁器の発展史における越窯青磁の重要性は言うまでもない。後漢時代に始まって南宋初期に終わった越窯青磁は、1000 年余りの長い年月を経て、絶えず発展·革新し、広域の窯業システムを形成した。その分布範囲は今日浙江の上虞の曹娥江中流域·慈溪上林湖·寧波東銭湖を含めた。歴史上で“類玉”·“類氷”·“千峰翠色”などの越窯青磁の名品は、長江の南北や長城の内外に流通したのみならず、アジアとアフリカの各地にも輸出され、多くの賛美と称揚を収めた。
越窯青磁の重要生産区としての東銭湖窯場は、草創期(後漢後期)·停滞期(六朝時代)·間断期(隋-初唐)·回復期(中晩唐)·発展期(五代)·隆盛期(北宋の早中期)·衰微期(北宋の晩期)·終焉期(南宋の早期)などの発展段階を相次いで経た。窯場の分布範囲は、寧波の東銭湖の周辺と鄞州区東呉鎮を中心にし、鄞州区五郷鎮―北侖区小港街道の一帯と奉化区西塢街道―尚田鎮の一帯を両翼としている。焼成した青磁の製品は民用の磁器と海外向きの磁器を主とし、宮廷への献上品と特注の陶磁器もある。多様なスタイルと多彩の様式を持つこれらの青磁製品はかつて国内外に流通し、中国磁器の発展史·越窯青磁の発展史と“海上シルクロード”史で重要な地位を有する。今なお大きな影響を持っている。
この本は考古学的発見を根幹とし、歴史文献を兼用し、東銭湖窯場の諸様相を体系的に紹介する。全書は「越窯青磁名飛揚(名高い越窯青磁)」·「銭湖周辺有窯場(東銭湖周辺にある窯場)」·「形似龍臥青山蔵(青山に隠れる龍窯)」·「風韵別具堪玩賞(東銭湖青磁の様式と芸術性)」·「河海交匯輸四方河海(青磁の流通)」·「世代伝承永流芳(青磁の保存)」という六章に分けられている。本書の目的について言えば、学術研究の考慮があり、文化普及の期待もある。筆者はこれによって今後の東銭湖青磁文化の考古学研究と保護·展示および伝承·創生を促進することを期待している。