2.3.4 まとめ

2.3.4 まとめ

以上では、プロトタイプの本動詞の“给”構文から拡張した二重目的語構文を見た。プロトタイプの“给”は、典型的には、主語とIOが人間であり、DOが具体物である。それに対し、拡張した“给”構文では、DOは抽象物で、主語及びIOは人間ではない場合がある。このような構文の意味的特徴として、DOが抽象物である時、DOの位置変化が見られなくなり、IOの状態変化のみが含意される。

そして、構文の主語が非情物である時、間接的な働きかけしかできないため、授与されるものも抽象物に限り、DOの位置変化が観察されず、IOの状態変化だけが見られる。

また、構文のIOが非情物である時、DOは具体物の場合は、DOの位置変化とIOの状態変化の両方が観察される。一方、DOは抽象物の場合は、前述のように、DOの位置変化が見られず、IOの状態変化が含意されると考えられる。

ここまでまとめたものを再掲すると、次のようになる。

(32)a.DOが抽象物である場合の“给”構文:

S给NP1(IO)NP2(DO)

[人間][人間][抽象物]

意味フレーム:SがIOにDOをもつ状態にさせる。IOは状態変化するが、DOは位置変化しない。

b.主語が人間ではない場合の“给”構文:

S给NP1(IO)NP2(DO)

[非情物][人間][抽象物]

意味フレーム:Sが原因で、IOがDOを獲得する。これもIOは状態変化するが、DOは位置変化しない。

c.IOが人間ではない場合の“给”構文:

S给NP1(IO)NP2(DO)

[人間][非情物][具体物]/[抽象物]

意味フレーム:SがIOに働きかけ、IOがDOをもつようになる。

以上のような用法は、すべて「IOが(DOを獲得することによって)状態変化する」という点のみに着目した、プロトタイプの用法からメタファーによって拡張した用法であると考えることができる。