2.4 文末に動詞を続ける場合

2.4 文末に動詞を続ける場合

プロトタイプとしての“给”構文では、次の例文(33)に示すように、「主語+给+IO+DO」という順に現れるのが一般的である。

(33)张三给李四一本书。

[例文(3)を再掲]

張三は李四に本を一冊あげる。

本節で考察するのは、上の構文の対象物であるDOの後にさらに動詞が続くタイプの“给”構文である。次の例文を参照されたい。

(34)老板给了我几个新的计划,给了我充分的空间发挥。

(《网络语料》)

社長はいくつか新しいプランをくれて、私が実力を発揮するために充分な空間をくれた。

(35)在比赛前一周,有报道说我在全明星选举的票数超过了奥尼尔,这确实给我添加了很多压力。……这又给了他一个理由生气,让他跟我对阵时更加粗野。

(《我的世界我的梦》)

試合の一週間前、ある報道によると、私はオールスター選挙で票数がオーニアを上回ったという。これは確かに私に多くのストレスを加えた。……これはまた彼に怒る理由を与え、彼は私と対陣する時にもっとがさつになった。

(36)马云给了他们3天的时间做决定。

(《谁认识马云》)

馬雲は彼らが決めるように3日をあげた。

例文(34)―(36)では、授与の対象物に後続する動詞の主語は“给”のIOであることが分かる。“给”のDOのほうは、これらの文では後続する動詞のDOではなく、例文(34)であれば、“用这个空间发挥(この空間で発揮する)”、例文(35)であれば、“以这个理由生气(この理由で怒る)”、例文(36)であれば、“用这些时间做决定(この時間で決める)”のように、後続する動詞の修飾語であると解釈される。しかし、この構文の中には、後続する動詞の主語が“给”のIOを兼ねるだけでなく、後続動詞の目的語も“给”のDOを兼ねている場合がある。

(37)伍胡里的声音他马上听出来了,并请求给他饭吃。

(《努尔哈赤》)

伍胡里の声を彼はすぐ聞き分け、彼に食べるご飯をくれるように求めた。

(38)在这儿有人给他吃的,还给他水喝。

(《人民日报》2000年)

ここには彼に食べ物をくれる人がおり、飲む水もくれる。

(39)努尔哈赤见那人不报姓名,也不讲清缘由,估计可能是刺客一类。于是决定给他一点厉害尝尝。

(《努尔哈赤》)

ヌルハチはあの人が名前も申し込まず、理由もはっきり言わなかったから、暗殺者かもしれないと思った。彼を少し痛い目にあわせてやると決めた。

例文(37)―(39)でも、DOの後に続く動詞の主語は、“给”のIOである受け手だと解釈され、かつ動詞の表す動作の対象物は“给”のDOであると解釈される。例文(37)であれば、“吃饭(ご飯を食べる)”、例文(38)であれば、“喝水(水を飲む)”、例文(39)であれば、“尝尝厉害(痛い目を味わってみる)”ということである。

これらの構文を日本語に訳す場合には、二通りの可能性がある。一つは、後の動詞句Vを「目的」として、「Vするように与える」という訳し方である。もう一つは、後の動詞句Vを「結果」として、「与えてNP1がVした」という訳し方である。

後者の意味では、“给”で表された「授与」が、受け手であるIOの次の行為を誘発するという点で、使役に似た意味をもっている。特に、DOが共に後続する動詞の目的語となる場合には、DOと後続する動詞の語順を入れ替えることにより、使役構文(例文(36)の示す「S+给+NP1+V+NP2」)が成立することがある。

しかし、DOがIOに後続する本節の語順(例文(37)の示す「S+给+NP1+NP2+V」)では、“给”の本動詞としての「授与」が中心的な意味であり、「結果」としての後続する動詞の表す行為の実現は必ずしも含意されず、「目的」のみを表している場合もある。

(40)给他吃了饭,还给他喝了酒。(結果)

[作例:自然度1.00]

ご飯を食べさせて、お酒をも飲ませた。

(41)给他饭吃了,但是他没吃。(目的)

[作例:自然度1.00]

彼が食べるようにご飯をあげたが彼は食べなかった。

中国語には、参与者を共有する二つの動詞句が並置され、全体としては単文として一つの出来事を表す構文があり、後の動詞の主語を前の動詞の主語が兼ねる場合が「連動文」、前の動詞の目的語が兼ねる場合が「兼語文」と呼ばれる。[5]後の動詞句が「目的」のみを表すか、「結果」を表すかの二つの解釈が可能なのは、典型的には連動文の特徴である。

(42)他去北京买东西。

[作例:自然度1.00]

彼は北京に行って物を買う。/彼は物を買うために北京に行く。

最初の動詞が“给”である例文(34)―(39)では、後の動詞の主語が“给”のIOであり、連動文と解釈することはできないが、後の動詞句が「目的または結果」を表しているという点は連動文と共通である。動詞句連続の後の動詞の主語が前の動詞のIOとなるのは、動詞句連続の最初の動詞句が二重目的語動詞句になる場合の共通の特徴である。

(43)我送了她一本书看。

私は彼女に本を一冊贈って見させた。/彼女が本を見るように私は一冊贈った。