6.6 おわりに

6.6 おわりに

本章では、“给……V”形式を用いる受動表現について考察した。

“给……V”形式の受動表現の成立条件として、まず、VR構造が必要とされる。このVR構造において、Rは結果補語、状態補語のほかに、補語を伴わずに、完了を表す“了”や進行相の“着”を用い、主語の結果状態を表現するものもある(第6.2.1節)。次に、“给……V”形式の受動表現は、DOの受動化構文であり、IOの主語への格上げである場合は容認されない(第6.2.2節)。そして、“给”には「反復の制約」があるため、本動詞としての“给”や、IOを導く“给”を含む能動表現をもたないということも述べた(第6.2.3節)。さらに、“给……V”形式を用いる受動表現では、領属関係のある名詞句の領属物が文末に残留しない方が構文の容認度は高いという傾向が分かった(第6.2.4節)。

本章は、SとIOの背景化、DOの前景化、それに結果要素をとるような共通性として、“给……V”形式の受動表現は、DOが主語となる本動詞の“给”構文から拡張した構文であると主張した。

【注释】

[1]例文(18)のc文において、“让”と“叫”は使役の意味として構文は成立するが、IOの受動化は認められない。そして“给”は一般の行為の授与構文としては成立するが、受動表現としては成立しない。

[2]日本語訳は筆者による。