4.5 おわりに

4.5 おわりに

本章は“V给”形式の二重目的語構文を考察した。“V给”構文の成立条件として、自動詞や状態動詞はVを構成することができない。“给”のDOとしてIOに移動するような対象物への働きかけを表し、所有変化動詞、「使役移動動詞」といった物の「授与」を意味する他動詞は成り立つのである。“V给”構文には、動詞の後置目的語を必ず二つもつ二重目的語構文と、“V给”の前にDO、後にIOをもつものがある。いずれの場合でも、移動物の受領者として“V给”構文のIOは必須である。

また、“V给”構文の拡張のプロセスに関しては、まず本動詞である二重他動詞の“给”は同じく「授与」の意味を有するほかの二重他動詞と融合し、ランドマークである受領者に認知的な際立ちのある二重目的語構文を構成する。この構文は、「授与」の意味をもつが、「受け手が潜在される」と思われる二重他動詞以外の他動詞に拡張され、単独では二重目的語構文が構成できない他動詞と“V给”の動詞形で二重目的語構文が構成される。また、行為連鎖の融合を経て、「取得動詞」や「動作動詞」のような二重他動詞以外の他動詞にも、特定の事物の「授与」が含意されるDO前置の“V给”構文が拡張する。

【注释】

[1]Langacker(2008)では、英語の作成(creation)、準備(preparation)、獲得(acquisition)の意味の他動詞の二重他動詞としての用法にこの用語を用いている。