5.4.4 まとめ
2025年09月26日
5.4.4 まとめ
以上の分析から分かるように、再帰動詞という概念は、中国語の記述にとって有効であると言えるが、日本語の再帰動詞と異なるところがある。中国語の再帰動詞は飲食類と感覚器官の作用を表す類しか認められず、着脱類に関する他動詞は純粋でない再帰動詞(再帰的解釈と非再帰的解釈の両方が可能)と考える。
“给……V”構文において、“给”の後に位置する動詞が着脱の意味を有する場合、構文は一般的に物の位置変化とIOの状態変化の両方が見られる。これらの構文は、IOが場所ではなく人間に限定された使役移動構文であると考える。“给”は、トラジェクターと異なる参与者をランドマークとして導入する。
一方、動詞が身体部位を対象とする他動詞の場合、身体部位が譲渡不可能なため、IOの状態変化だけが観察される。“给”を導入するのは、トラジェクターと異なる参与者の状態変化を起こす身体部位の所有者である。
そして、“给”に後続する動詞が真の再帰動詞の場合は、物の位置変化とIOの状態変化が共に観察される。構文の示す意味的特徴は「取得動詞」の“给……V”構文に似ており、トラジェクターと飲食物や知覚の受け手が異なることから、授与構文の一種として捉えることができる。
“给”の役割については、後続する他動詞が再帰性をもちうる場合に、“给”と共起することで、再帰性が失われることも明らかである。