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新生日本の幕開け

1990年代初頭にバブル経済が崩壊してから、日本は長期に及ぶデフレと不景気、いわゆる「失われた10年」に突入しました。

しかし、今日の日本は、確実に強さを取り戻してきています。経済学者や評論家の予想に反して、企業は過去最高の業績を収め、株式市場の株価はかつての底値から何倍にも上がりました。今回の好景気によって、雇用や不動産は売り手市場となっており、日本は確実に明るい将来に向かって歩みだしています。

日本経済が見事に復活した要因について、政府はトヨタやキャノン、日産、新日铁といった大企業の、再生と成長とを挙げています。また、小泉内閣の構造改革がもたらしたメガバンクである三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行、大企業の統合によるJFEホールディングスなどの登場も、日本復活の原動力になったといわれます。

この考察は、決して間違いではありません。しかし、新しくて多様な産業と企業が、若い世代の力によって台頭してきている日本の現状を考えると、日本の強みを大企業のみに見出すのは不充分ではないでしょうか。

アメリカや中国、インド等において、新興企業はメディアから十分な注目をされています。一方、日本では、新しい企業群が、伝統ある大企業ほど話題に上ることはありません。しかし、日本の新しい企業群は、確実に経済の活性化に寄与しています。

2006年9月14日にソーシャル・ネットワーキング・サービスのミクシィが東京証券取引所に上場し、上場開始から間もなく、時価総額がなんと2,200億円にもなりました。東京大学卒業で弱冠31歳のミクシィ代表取締役社長・笠原健治氏は、たった一晩にして億万長者の仲間入りを果たしたというわけです。

この他にも、数多くの新しい企業が、「新生日本」を牽引しています。日本最大のEコマース企業である楽天は、プロ野球チームのオーナー会社でもあり、時価総額が一時期、1兆円を超えました。ハーバード・ビジネス・スクールを卒業した楽天会長兼社長・三木谷浩史氏は、プロ・サッカーチームも所有しています。

ベンチャー企業の数々の成功事例は、日本の新しい世代の起業家たちが活躍する時代になったことの証左ではないでしょうか。グロービス・キャピタル・パートナーズが設立したベンチャー・キャピタル・ファンドの実績では、投資額の十倍以上ものリターンが返ってきているケースもあります。

そこで、これら新しい世代の起業家の活躍を「新生日本の幕開け」と命名したく思います。「新生日本」の企業とは、20代、30代の若い起業家のもとで、日本を牽引する知識集約型産業です。対する従来の「古き日本」では、ほとんどが大規模製造業などの資本集約型の企業が占めています。

この「新生日本」現象の要諦は、以下の四つに集約されます。