単語

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このような特色から、不思議なことが起こる。たとえば、鉄鋼業で、同じ設備を使えば、どの国でも、同じ時間に、同じ量の鉄鋼が生産されるはずであるが、日本では、アメリカやイギリスよりも生産量が多いのである。鉄鋼の生産は、コンピューター制御によって、自動化されているが、日本では、仕事を任された人々は、その一部を手動に変えて工程や設備操作を改良し、その成果は再び、コンピューターのプログラムに組み入れるという芸当をやってのけるのである。

アメリカやイギリスでは、エリートが開発したプログラムをそのまま利用しているのに対して、日本では、現場の人々は、どんどん改良してしまうのである。これこそ、まさに、厳密なマニュアルに従う工場とぼんやりした、マニュアルしかない工場との差である。日本の鉄鋼業の生産性は、欧米より十五パーセントもたかい。それは、任せると猛烈に働く国民と、任せると遊んでしまう国民との差かもしれない。