第三部 魅力を世界にもっとアピールせよ
フクシマ:また日本の各都市は、外資系企業の投資に関して、広報、宣伝活動にもっと力を入れたほうがよいのではないでしょうか。都市ごとの魅力を海外に対して十分に宣伝しているかというと、疑問を感じます。
欧米各国や各都市は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、あるいはインターネットを使って、非常に積極的に投資を呼び掛けています。そこで、欧米企業のトップからは、「日本の各都市も、われわれが魅力を感じる説明やプレゼンテーションをもう少ししたほうがよいのではないか」という話をよく聞きます。
伊藤:東京に関していえば、これまであまり広報、宣伝活動をしてこなかったように思います。日本の首都として、放っておいてもある程度は企業が集まってくるというところがありますから。
フクシマ:たしかに東京に進出してくる欧米企業で、見返りをすぐに得られなければ撤退するような企業は、最近、減っています。規模的にも大きな会社が長期的な視点で考え、じっくりと東京でビジネスを展開しようとしていますから、宣伝活動に熱心ではないのかもしれません。
伊藤:それに比べ、外資の力で成長を遂げようとしている中国の各都市は熱心です。数年前、中国の天津市郊外の工業地区を訪れたことがあります。そこで驚いたのは、日本企業担当の市役所の職員が、天津市によって日本に留学して戻ってきた人だったことです。さらに、アメリカやヨーロッパなどにも留学させているそうで、英語はもちろん、ドイツ語を話せるスタッフが何人もいました。日本には海外からの企業誘致に関して、そこまでの努力をしている自治体は少ないと思います。
フクシマ:私も中国で似たような経験をしたことがあります。少し前、アメリカのIT企業の日本オフィスで働いていたのですが、そのアメリカ本社の社長と2001年に北京と上海に行きました。相手の中国人のほとんどは、アメリカに留学し、シリコンバレーで働いた経験があった。彼らは、「いま中国では、半導体を設計する技術者が不足している。技術者を育てたいので、ぜひ研修所をつくってもらいたい」とわれわれに申し出ました。その条件として、技術指導者とソフトウェアを提供してくれれば、土地も建物も無料で提供するという話でした。
それで契約を結び、2年後には北京と上海に研修所ができたのですが、当初予算より経費が50パーセントほど余分に掛かってしまった。それを全部、中国側が負担したのです。日本の各都市も海外からの投資を呼び込むためには、そのようなかたちで、メリットを明確にするべきでしょう。
伊藤:日本から海外へのアピールという点でいうと、日本企業もあまり得意ではありません。毎年1月、世界中の大物政治家や経済人を集めてスイスで「ダボス会議」が開かれます。その会議を欧米企業は積極的にサポートし、会議を盛り上げようと意識しています。
ところが日本企業はそのような会議をあまり積極的にサポートしていません。普段のビジネス以外で、海外のさまざまな組織とネットワークを積極的に広げていくという意識が弱いように感じます。
フクシマ:最近、国際会議の場では中国人やインド人の元気がいいですね。あらゆる機会を捉えて、世界中にネットワークを広げようとしている。それに対して日本人は、以前よりも、国際会議の場での活動に消極的になっているように感じます。日本の存在感を高めるためにも、もう少し積極的にアピールする必要があるのではないでしょうか。