第二部 真の「科学技術創造立国」をめざして

第二部 真の「科学技術創造立国」をめざして

いま政府は日本を「科学技術創造立国」にするといっています。私はそれを実現するために、考えていることがあります。発明・発見という山の頂上をめざして多くの人が走っている段階では、さまざまなルートが考えられますが、それらのできるだけ多くに予算をつける必要があるということです。これを無駄だと見る意見もありますが、網を大きく張ることは大事です。

自動車のエンジンにしても、経営者の思い入れで一種類だけにこだわってしまい、失敗に陥ったケースが多々見られます。その会社が揃えるすべての自動車に同じエンジンを載せてしまい、共倒れになってしまったのです。

トヨタの場合、五つか六つのバリエーションをつくり、そこから選んでいます。そして、たまたまハイブリッドシステムが成功を収めたわけです。国家の政策でも同じで、早い段階でどの技術に懸けるかを決めるのではなく、多少無駄はあるかもしれませんが、いろいろやらせてみる。そのうえで見込みがないものは落とし、最終的に最も優れたものを残すのです。