第1部 高い成長を続ける中国経済求められるバランスの取れた成長世界が注目する中国政府の舵取り

第1部 高い成長を続ける中国経済求められるバランスの取れた成長世界が注目する中国政府の舵取り

—現在は穏やかな経済成長実現に向けた調整局面—

大原:2008年は中国が改革開放政策をスタートさせた1979年から30年目にあたります。その象徴的なイベントとして位置づけられるのが北京オリンピック。2010年には上海万博開催も控えています。年率10%を超える経済成長の恩恵に少しでも多くあずかりたいと考える各国からは、かつてのチャイナバッシングとは明らかに違う対応が生まれ、これが現在の流れとなっています。

反面、行き過ぎた経済成長により過剰流動性が生まれ、その解消が課題となっています。はたして中国政府はその舵取りを上手にできるのか、外国資本や諸外国もその手腕に注目しています。

熊谷:2007年の年率11%以上を超える経済成長率は確かに高すぎます。「改革開放」路線が成功して飛躍的な経済成長を遂げ、その急成長ぶりには世界の国々も驚嘆したわけですが、今までどちらかというと「経済成長一辺倒」に偏り過ぎ、そのひずみも顕在化してきました。昨年10月の共産党大会では、「和諧社会(調和のとれた社会)」への建設を目指すということで、環境問題と経済成長のバランス、沿岸地域と内陸地域、都市と農村の格差是正、資源の節約、社会保障の充実などを掲げ、持続可能な発展をベースとした調和のとれた社会へと舵を切りました。

物価上昇によるインフレも懸念され、株式市場、不動産への投資加熱を抑えようと、中国人民銀行(中央銀行)による預金準備率も14.5%と過去最高の水準です。この預金準備率の引き上げは8月以降5カ月連続、今年で11回目で、政府による金融引き締めに対する強い姿勢がうかがえます。中国経済を軟着陸させることで成長ライフ(寿命)を持続させることを意図しているわけです。