第二部 リスクはサブプライムにあらず?
勝間:サブプライム問題について、「なんでこんなことになったの?」と関係者に聞く機会が何度かありました。当事者たちは、「その時々において静的なリスク量としては十分コントロールの範囲内だと思っていた」と言っていました。ただ、リスクがリスクを呼ぶという形で増殖をしていき、金融システム全体のシステマティック・リスクにつながってしまいました。金融システムについて詳しくない人たちにとっては、リスクがより恐ろしいものと見えてしまうのかもしれません。
竹中:今年のダボス会議の初日に、いったい今年最大の世界経済のリスクは何かということで議論しましたが、サブプライム問題そのものと答えた人は多くありませんでした。むしろサブプライムローンに端を発して、それに対して政府が対応を誤るとか、マーケットの人たちが対応を誤るとか、まさに人的な対応の悪さということこそが最大の懸念要因であるという意見が多かったです。まさにそういうことが積み重なっているということだと思うんですね。
もちろん、いけいけドンドンといいますか、モノの値段が上がり続けるというようななかで信用リスクの管理が甘くなったということは原因の一つだと思いますが、それに加えて、いま申し上げたような、各プレーヤーの、過剰な対応といえるようなものが積み重なってしまったということだと思います。
勝間:どうしてもリスクの取りすぎてしまうということが時に起きてしまうことがあります。私自身トレーダーをやっていたからよくわかるのですが、やはりギリギリまでリスクをとったほうが、パフォーマンスがよくなるので、最終的に、いわゆる「チキンレース」のように途中で降りられなくなって危険に踏み込んでしまうことがあります。関係者の話を聞いてみると、思ったより危機が来るのが、半年から一年早かったということなんですね。みんなどこかで、サブプライムについて爆発するのはわかっていたんだけれど、「下りるタイミングを間違った」と話していた人が多い。
竹中:まあ、うまく降りた人もいるんだと思います。だいたい将来的にこういうことが起こるということが、かなりの確度で予想されるようになると、それは必ず早く起きますから。
勝間:情報の伝達が早いので、加速して起きてしまうわけですね。