第四部 自民総裁選が浮かび上がったリテラシーの低さ

第四部 自民総裁選が浮かび上がったリテラシーの低さ

勝間:日本のバブル処理をかなり手本にして、いいとこ取りをしているのではないかという見方もありますね。

竹中:私はちょっと違うと思います。日本から学んでいるという意識は、彼らはあまり持っていないのではないでしょうか。

勝間:やるべきことをやっていると?

竹中:米国では1980年代の終盤ぐらいに、同じようなS&Lの危機を経験しています。むしろ日本から学んでいるとすれば、日本みたいに遅くやったらダメだということではないでしょうか。

勝間:あのスピード感は見習うべきだと私も思います。日米で政策の対応スピードがこれだけ違うのはなぜでしょうか。

竹中:まさに政策に対するリテラシーが、政治家のレベルでも、論評するエコノミストや評論家のレベルでも、メディアの担当者のレベルでも、社会全体で違っているというのが、最大のポイントではないでしょうか。

勝間:厚みが違うわけですね?

竹中:そうですね。金融危機への対応については、「行動すれども弁明せず」という、イングランド銀行の有名な格言があります。議論している時間があったら先に行動して、決着がついてから、ちゃんと説明すればいいんだと。そういう鉄則があるわけです。

勝間:利下げも資本注入も。

竹中:そうです。不良債権ができてしまったら、それは一刻も早く回収するのも鉄則です。そういう鉄則に則って、割と淡々とやっていったらいいのですが、日本では、社会全体としてそういうリテラシーがないために、例えば住専のときから始まって、公的資金ということは、いまだに多くのメディアは混同して使っているわけで、リテラシーが高まっていないというのも非常に大きな問題だと思いますよね。

勝間:そういう金融リテラシーあるいは政策リテラシーのなさが、金融危機をこれから引き起こしかねないわけですね。

竹中:そう思います。自民党の総裁選で候補者たちの討論を聞いていても、金利の話をするにしても、実質金利なのか名目金利なのか、混同して皆さん議論していて、それを司会者がだれも正さない。これはやはりちょっと恐ろしい現象だと思いますね。

勝間:名目金利だけを見て話しているようにしか思えませんね。

竹中:金利が著しく低いというのは、名目金利は著しく低いですけれども、実質金利は著しく低くはないですから。

勝間:普通ですよね。