アメリカの消費減が日本の輸出を減少させるメカニズム

アメリカの消費減が日本の輸出を減少させるメカニズム

今後の状況を予測するためのもう1つの手掛かりは、アメリカにおける消費支出の動向だ。1月14日に発表された米商務省の08年12月の小売り売上高(季節調整済み)は、前月比で2.7%の減少を示した。通年でも伸び率がマイナスになる。

ところで、アメリカにおける小売り売上高の減少は08年夏以降に始まった現象であり、それが加速したのは秋以降である。これまでの消費の伸びを支えてきた米家計の債務は、減少を始めているが、まだ高水準だ。したがって、債務圧縮が今後も継続し、それによって消費の減少過程が今後も続くと考えられる。

消費の内容も、これまでは消費者金融の引き締めによる耐久消費財(とくに自動車)の減少が中心だったが、それが消費一般に及びつつある。全米小売協会(NFR)によると、衣料品、家具・インテリアなどが前年比10%近く、あるいはそれ以上の減少を示している。これらは、中国からの輸入品が大きな比重を占める分野だ。

自動車の購入減少は日本からの輸入の減少に影響したが、一般的な消費の減少は中国からの輸入の減少に影響するだろう。それは、中国における輸出産業の生産減を引き起こし、それが日本から中国への輸出(部品や機械)の減少を引き起こす。

したがって、日本の輸出減少は、新しい段階に入ったと見ることができる。すなわち、これまでは対米自動車輸出の減少が生じたが、今後は、対中国の輸出の減少が生じるだろう。

なお、アメリカの貿易収支はこれまでも徐々に減少しつつあったが、その要因は主として輸出の増加だった。ところが、最近では、輸入の減少が貿易赤字を減少させるスタイルになってきている。すなわち、米商務省が1月11日に発表した08年11月の貿易統計によると、国際収支ベースの貿易赤字(季節調整済み)は前月比28.7%減少したが、内訳は輸出が前月比5.8%の減少、輸入は12.0%の減少となっている。

アメリカ国内の消費が減少し、それが輸入を減少させて経常収支の赤字が縮小することは、今回の経済危機の基本的な原因を取り除くためにどうしても必要な過程である。それがいよいよ本格化しつつあることがわかる。