第一部 都市間競争が激しくなる時代

第一部 都市間競争が激しくなる時代

伊藤:グレンさんは、日本に住みはじめてからどれぐらいたちましたか。フクシマ:私はアメリカの西海岸で育ち、スタンフォード大学を卒業しましたが、その後、日本の慶應義塾大学や東京大学で勉強しました。さらにハーバード大学に8年間居て、1985 年から90 年の初めまで、米国通商代表部(USTR)に所属し、ワシントンD.C.に住んでいました。

その後、アメリカ企業の駐在員として1990 年の6月に東京に来ましたから、それから16 年、日本に住んでいることになりますね。

伊藤:つまり、アメリカの西海岸と東海岸、さらには東京で暮らした経験がおありになるということですね。グレンさんが日本に再来された90 年は、バブルが崩壊し日本経済が停滞しはじめたころですね。その後、六本木や汐留など、都市の再開発が一気に進み、ずいぶん街の風景が変わりました。現在の東京の魅力や問題点を、どのように感じていらっしゃいますか。

フクシマ:私は都心に住んでいるので、とくにそう感じるのかもしれませんが、以前と比べて外国人がずいぶん増えたと思います。冷戦終結以降、経済のグローバル化が進んだことの関係でそうなっているのかもしれません。

伊藤:たしかに東京だけではなく、アジアの都市ではソウルも上海もバンコクにも外国人が増えています。

フクシマ:ヨーロッパでもEUの誕生と拡大によって、各都市のグローバル化が進んでいます。最近は、パリでもけっこう英語を使える人が増えています。

伊藤:ロンドンのレストランは、昔ほどまずくなくなったとも聞きます(笑)。

このようなグローバル化の流れのなか、都市間の競争が激しくなっていくのではないでしょうか。以前、ヨーロッパの大手ブランドの人が、「日本と中国、どちらに出店するかを考えているのではなく、東京、大阪、上海、香港のいずれの都市に出店するか、という選択肢のなかで動いている」といっていました。国単位ではなく都市単位で進出を考えるという姿勢ですね。フクシマ:在日米国商工会議所(ACCJ)の会頭を務め、現在、EBC(欧州ビジネス協会)の会合に参加している経験からいいますと、アメリカやヨーロッパ企業がアジアに投資する場合、各都市の利便性やコスト、人材獲得の面などをかなり厳密に比較して決断を下しています。利便性のなかには、ある事業を設置した場合、どの程度の規制があって手続きの煩雑さはどうか、投資の回収にどれぐらいの年月がかかるかなどを考慮しています。またとくに、高級ブランド製品を販売している会社は、高額所得者がどれだけいるかということを調査・検討しているようです。